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サウンドクリエイターに転身した京都大学卒の元人事マンが雑多なノウハウを晒すブログ。 「おだしすたぢお」

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音楽家が心得るべきDAWとの接し方。「いつでも戻れる」の危険性についての考察。

2016/11/06

かつての音楽制作は録ってはテープに書き込み、エフェクトを通してはテープに書き込み、ステムミックスを作ってはテープに書き込み…といった今から考えると信じられないくらい面倒なプロセスで行われていました。

一度に書き込める楽器(テープ)の数には限りがあったからです。

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DAWの登場がもたらしたもの

たくさんありますが一言で言うならば「可逆性」だと思います。

たとえばギターにかかっているエフェクトがおかしいとき、DAW上ならそれぞれのエフェクトをソロで鳴らし、どこに問題があるか簡単に確認できます。

もしもこれがテープに書き込んだあとのトラックだったら?ひと昔前の可逆性の低い楽曲制作では既に他の音声やエフェクトと併せてテープに書き込まれてしまった楽器の音をあとから変更することは容易ではありませんでした

しかしコンピュータのその驚くべき記憶力によって、制作のどのタイミングにおいても録音時点の原音に遡ることができるようになりました。これこそがDAWの最強・最凶の特徴です。

良いことばかりではない

DAWの機能はそれだけ見ればメリットしかありません。
しかし、DAWを使う人間の心理面まで考えれば必ずしもメリットばかりではないと思うのです。

火事場の馬鹿力

「もう後がない…」
そんな緊張感が功を奏する場面、皆様にも経験はあるのではないでしょうか。

ロスタイムでの逆転劇もそう、トーナメント戦に強くてリーグ戦に弱いチームもそう。

ここで失敗したら全てがムダになる!
精神衛生にとって必ずしも良いものではないこのような心理状況も、人間のパフォーマンスに結果として良い影響を与えることは少なくないのです。

そして音楽も漏れずにこれが当てはまります。

音楽制作における火事場

従来の制作の現場では、録音・編集のその全てが全身全霊をかけるべき「正念場」でした。
テープに起こす中で「もう戻れない」という決断の場面が頻繁にあるわけですから当然とも言えます。

しかしその緊張感が音楽的に功を奏す場面も多々あったのです。

ジャズがアドリブに重きを置くのもこの緊張感が音楽的であると先人たちが気付いていたからでしょう。

しかしコンピュータが制作の現場にどっしり構える昨今。

いつでも、過去の編集プロセスに瞬時にタイムワープできる恵まれた環境の中で、悲しいかな我々は音楽的で重要な判断を後に回してしまいます

そして「いつでも戻れる」という安心感を得ることを目的化し、もっと早く決断していれば出てきたかもしれないより良い想像力や、パフォーマンスを、気付かぬうちにフイにしてしまっているかもしれないのです。

真に守るべきものは?

ほとんどの処理をコンピュータの中で行うのが、このご時世の普通ではありますが、もしかするとそれは可逆性への「安心感」を確保しているに過ぎないのかもしれません。

恵まれた環境で制作ができる。大いに感謝すべきことでありますが、そこに油断すればDAWの中で完結させることを目的化させてしまい、良い音の追求をやめてしまう危険性は大いにあるといえます。

音楽的な決定を後回しにしてしまっているかもしれない自覚のもと、「安心感への欲求」をコントロールすることすら現代の音楽制作では求められているのかもしれないと、1人のミュージシャンの端くれとして身が引き締まるところであります。

2016/9/29 odasis

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